中学校のときに先生からタイピングについて教わったことを思い出した。
普通はまずキーボードを見ながらタイピングできるようになって、それに慣れてきたらだんだん見ないでも打てるようになると考えてしまう。しかし、それは間違いだと言っていた。初めから見ないで打とうとしないといつまで経ってもタッチタイピングはできるようにならないのだと言っていた。
そんなこと言われてもいきなり見ないで打つなんてできないと思ってしまう。
しかし、先生はまずa、i、u、e、oだけでいいから見ないで打てるようになれという。たった五文字ならできそうかなと思って練習すると、すぐに見ないで打てるようになる。
そうすると先生はこう言う。日本語というのは子音と母音の組み合わせでできている。母音が打てるようになったということは、日本語のうち半分はタッチタイピングできるようになったということなのだと。
そんなこと言われると、なるほど確かにそうだなと思う。するとその他の文字もせっかくだから覚えようという気になってきてあっという間にタッチタイピングができるようになってしまう。
あのとき先生がこういうことを教えてくれなかったら、今でもキーボードを見ながらタイピングしていたかもしれない。見ながらのタイピングの延長上にタッチタイピングはないのだ。
こういうことに気がつかないで落とし穴にはまってしまうことは人生の中でたくさんある。例えば、英文をいくらうまく日本語に訳せるようになっても、英語が流暢に話せるようにはきっとならない。
自分が目指すものは、自分が今やっていることの延長上に本当にあるのかということをよく考えなくてはいけない。タッチタイピングを通してなかなか深いことを教わったなと思う。